近年の介護・老人ホーム業界の現状と動向

介護業界では、居宅介護(訪問介護、訪問看護、デイサービスなど)、および施設介護(有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、老人保健施設など)のどちらも買収ニーズが多くなっております。
とりわけ、「訪問看護」と「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」が人気です。
訪問看護は訪問介護と比較し、より多様なサービス提供が可能であり増加する訪問介護に対して差別化が図れること、サ高住は介護報酬以外にも家賃収入や各種サービス提供による収入(食事代など)が得られるため強いニーズがある業態となっております。
買収主体は大手介護事業者と異業種からの参入が多いのが特徴です。
大手の介護事業者は、エリア拡大・サービス拡充を目的とし、積極的なM&Aを展開しております。また、この業界は成長途上にあり、将来的な高齢化社会を背景とした業界規模の拡大を見込み、異業種のM&Aによる参入も比較的多くなっております。
介護・老人ホーム業界の推移グラフ
※以下はジャンル別業界一覧から抜粋しました。
左記グラフは介護業界の業界規模の推移をグラフで表したものです。
介護業界の規模の推移を見ることでその市場の大まかな現状や動向を把握することができます。
平成25-26年の介護業界の業界規模(主要対象企業20社の売上高計)は7,503億円となっています。
高齢者人口の増加を背景に拡大 2025年には団塊の世代が後期高齢者へ
介護業界の過去の推移を見ますと、平成17年以降、年を追うごとに上昇を続けており、平成25年までの介護業界は拡大傾向にあると言えます。
高齢者人口の増加を背景に介護業界は拡大を続けています。平成24年4月現在の要介護認定者数は533万人。平成12年の218万人に比べ、12年で約2倍以上に増加しています。さらに10年後には、人口800万人を超える"団塊の世代"が後期高齢者を迎え、さらなる増加が見込まれています。
こうした高齢者人口の増加を背景に、介護業界は拡大を続け、今後もさらなる拡大が見込まれています。
事業継承、買収、異業種参入など活発化する介護業界
こうした拡大する介護業界の動向を受け、業界内では活発な動きが見られます。
平成19年、訪問介護大手のコムスンは管理義務違反や介護報酬の不正請求などの不祥事が発覚。同年6月に介護事業からの撤退を表明しました。訪問介護最大手のコムスンが撤退したのち、業界首位のニチイ学館が居住系サービス事業を継承。セントケア・ホールディング、ジャパンケアサービスグループ等が訪問介護事業を継承しました。
平成24年3月、有料老人ホーム大手のメッセージはジャパンケアサービスを買収し、子会社に。有料老人ホームのさらなる強化を進めます。
一方、異業種からの参入も目立ちます。居酒屋チェーンのワタミ、教育大手のベネッセ、オフィスコーヒーなどのユニマット、ハウスメーカーの木下工務店など異業種からの参入が相次いでいます。
介護職員の不足と賃金の改善が課題
高齢者人口の増加に伴い拡大する介護業界ですが、一方で介護職員の人材不足という課題も抱えています。
人材不足の要因の一つとして、介護職員の賃金の低さにあります。平成25年のケアマネージャーの平均年収は367万円、ホームヘルパーの平均年収は289万円。同医療系の看護師(472万円)や准看護師(399万円)に比べて低い水準にあると言えます。
今後も日本の高齢化はさらに進み、それに伴い介護業界の拡大はさらに続きます。成長する産業の中で、人材の確保は急務であり、賃金の見直しも含め、抜本的な改善が期待されるところです。
介護業界 シェア&ランキング(平成25-26年)
介護業界内における売上高及びシェアのランキングをはじめ、純利益、利益率、総資産、従業員数、勤続年数、平均年収をランキング形式でまとめております。
各々のランキングを比較することで介護市場内のシェアや現状、動向を知ることができます。
介護業界 売上高&シェアランキング TOP10
企業名 | 売上高(億円) | 売上高シェア※ | |
1 | ニチイ学館 | 2,714 | 36.2% |
---|---|---|---|
2 | ベネッセHD(シニア・介護事業) | 795 | 10.6% |
3 | メッセージ | 742 | 9.9% |
4 | ツクイ | 574 | 7.7% |
5 | セコム(メディカルサービス事業) | 538 | 7.2% |
6 | ユニマットそよ風 | 406 | 5.4% |
7 | ワタミ(介護事業) | 350 | 4.7% |
8 | セントケア・ホールディング | 314 | 4.2% |
9 | シップヘルスケアHD(ヘルスケア事業) | 188 | 2.5% |
10 | ケア21 | 158 | 2.1% |
介護会社の売上高ランキングを見ますと、首位のニチイ学館が高いシェアを誇っています。
前年に比べ売上高を大きく伸ばした介護会社は、ランキング10位のケア21で売上高前年比+18.8%の増加、5位のセコム(メディカルサービス事業)で売上高前年比+12.1%の増加、3位のメッセージで売上高前年比+10.4%の増加となっています。
※シェアとは介護業界業界規模(対象企業の売上高合計)に対する各企業の売上高が占める割合です。シェアを比較することで介護市場における各企業の占有率を知ることができます。